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第4話

俺達は共用の井戸に行って顔を洗い水を一杯飲んだあと、朝食を食べにコウモリのねぐらまで歩き出した。
「そういえばショウの家ってだいぶ散らかってたね。綺麗好きだと勝手に思ってたよ」
ジャンがそういえばみたいに言う、確かに俺のレンタルハウスは汚い。いろいろなものが散乱していて
鉱石とか原木や糸など、わけのわからない状況になっている。

「ちょっとクリスタル合成で故郷の品を作りたくてな、いろいろ必要な物を集めてつつ試行錯誤してたら
こうなってしまったというわけだ」
「へえ、ショウの故郷ってどこなの?」
「日本ってとこなんだけど、知らないよな…話を聞くにひんがしの国ってとこに似てるみたいだけど」
「うーん、聞いたことないね…」

まあ当たり前か…ちなみにひんがしの国はこの大陸から海を超え、遠く離れた東にあるらしい。
忍者とか侍とか聞いたことのある単語もその国から来てる。日本とは違うみたいだけどね。
「ところで故郷の品って何かできたの?」
「簡単なのしかできてないけど、今見せられるものと言ったらこれくらいしかないな」

そう言うと俺は腰に備え付けられた小物入れから、細長い容器を取り出す。
そしてそれを開け、中身を取り出す。
「これは?」

「これは箸、これを使ってものをつまんで食べる」
こっちにはフォークとナイフくらいしかなかったからな…
「へぇー、珍しいね、いつも使ってるの?」

「家で食べたり、弁当とか食べるとき使うくらいかな」
わざわざ店でマイ箸を出すようなことまではしない程度だな。

そして10分ほどだらだら話をしながら歩いて、俺達はおなじみコウモリのねぐらにたどり着いた。
コウモリのねぐらは基本的には宿屋で、朝食のサービスもやっていなかったのだが、やはり増える需要に
応えてか、酒と簡単な料理を出すようになった時と同じ時期に朝食を出すサービスを始めるようになった。

最近だと店員が一人増えたらしい。おばちゃん一人だと大変そうだったし、いいことだと個人的には思う。
店の中は昨日あれだけ騒いだにも関わらず、いつもと変わらない状態に戻っている。
朝早いだけあって客足もまばらで、おちついた静かな空間になっている。

「そうだ、ジャン天気もいいし買って外で食おうぜ」
「賛成!ショウにしてはいいこと言うね」
「俺にしてはってのは余計だ…んじゃあ決まりだな」

そう決めた俺達は早速アイアンパンにソーセージを2つずつ買って店をあとにした。
200ギルもあればお釣りが来る。
さっそく腰につけていたブロンズナイフを使い切れ込みを入れたあと、ソーセージを挟み込んで
簡易ホットドッグの出来上がりである。

「よし、これを持って商業区の噴水のある炎水の広場で食べるとするか、これだけじゃ寂しいし
あと途中でロデリュクスさんところでリンゴ買っていこう」
リンゴというのは、フォルガンディ地方特産の妖精のりんごである。
特徴として表面にぼんやりと発行する水玉模様がある。

大量に取れるため値段は安く、ポピュラーな果物である。味は甘味と酸味のバランスがちょうどよく
実も小粒ながら締まっていて美味しい。
フォルガンディは『北壁』と呼ばれる、切り立った山脈を超えた先にある地域で、永久凍土でできた土地。
りんごの栽培はどうしてるのやら…気になるところである。

それから俺達はロデリュクスさんのところでリンゴを2つ買うと、炎水の広場に向けて歩き出した。
炎水の広場とは、バストゥーク商業区にある名物で、憩いの場となっている。
俺達のいる場所からも歩いてすぐ着く場所にある。

しばらく歩くと俺達は炎水の広場についた。炎水の広場は噴水を中心にした円形の広場で、ちょっとした
スポーツができそうなほどには広い。
取り敢えず噴水の周りの縁に座り、一息つく。

「さーて食べるとしましょうかね」
「待ってましたー!ずっと持ちっぱなしだったからねー、早く食べよう」
いえーい食べ物~!とばかりにテンションの上がるジャン。

「マスタードあるけどいるか?」
「おー!準備いいじゃない」
ホットドッグといえばケチャップにマスタードだけど、マスタードだけは家にあったので取り敢えず小物入れに
突っ込んでおいた。瓶詰めのマスタードをスプーンで取って塗り塗り。

「まあな、さて食おうぜ」
がぶりとホットドッグにかぶりつく、アイアンパンは硬いパンなのでこういったものには向いてるか分からな
かったが、なかなかうまい。噛みごたえのあるパンに、ワイルドな味わいのソーセージにマスタードのぴりりと
した味わいがちょうどいい。

隣のジャンを見ると、何も言わず黙々と食べている。何も聞かないでもうまいというのはわかる。
お次はリンゴ、この世界の食べ物はすべて無農薬なんだなぁと考えるとすごいと思う。

服で拭ってから齧る。シャリシャリとした食感がいい。少し酸味が強いがホットドッグの後だと
ちょうどいい具合だ。

「さーて、ジャンよ食い終わったらどうするんだ?というか何時までこっちにいるんだ?」
「そうだなぁ……あと2,3日は居ると思うよ、前の冒険で手に入れたガラクタが売れるにはそれくらい
かかると思うし、その間はこっちに居ると思うよ」
「へえ、競売所に出すのか?」

「まあね、そっちのが早く売れるしね」
競売所というのは、様々な品物が集まる市場のようなものである。
売りたい側は手数料を払って、競売所に品物を預ける。その際この値段以下では売りませんよという最低価格
を明記する。その際によく取引される品目の場合は中央の競売所の取引相場のデータがあるので
それをふまえて設定することが多い。

買いたい側は、競売所に金を払い、競売所はそれを売った側に渡す。
こうしてみると競売というよりかは、国が売買を仲介するフリーマーケットみたいなもんだな。

「まあそれはおいといて、俺は食べ終わったし、鍛冶ギルドにに台車取りに行くけど、どうする?」
鉱石の引渡しに使った台車を取りに行くといくのは俺に定められた仕事なのである。
まあ今日は休みになっちゃったけどね。

「暇だし僕も付いて行っていいかな?大工房ってのも見てみたいし…」
「決まりだな、んじゃ行くとするか」

ということで早速俺たちはすぐ近くの大工房に足を運ぶことにしたのであった。
鍛冶ギルドは大工房という大きな建物の中にある。
この炎水の広場からも歩いてすぐの場所なのでこの用事を済ませるにはちょうどいい。

一応大工房という建物は政府の機能も抱えているんだけど、結構出入りは自由である。
部外者としてはもうちょっと気をつけたほうがいいんじゃないか?と思うのだけれど
なんと凄腕の門番がいるので問題ないらしい。

大工房は2層の構造になっていて、昇り降りするには2階の水車によってまかなわれているエネルギーで
動いているエレベーターを使わなくてはならない。コレが微妙に不便で階段を作って欲しいと常々言っている
んだけど……これは今言うことじゃないな。

「じゃあ僕はいろいろ見てくるから!」
ジャンはというと、大工房に入るなり早速このようなことをいって消えていった。小学生か!
俺は……台車を受け取るだけだな。
早速鍛冶ギルドに行くとするか。

鍛冶ギルドは大工房の1階の広場の先の奥まったところに存在する。
何度も来ているので場所は完璧に覚えている。鍛冶ギルドバストゥーク本部という札がついたドアをくぐり
俺は鍛冶ギルドに立ち入る。ギルドに入った瞬間ムッとした熱気が俺の体を包む。この熱の元はここに
ある巨大な炉である。ここの巨大な炉の煙突は外までつきだしている。

中では数人の職人がせわしなく働いている。……見るからにサボってる人もいるけど。
「すいませーん、台車受け取りに来ましたー」
「あぁ、おたくさんっすか、いつも世話になってるっすー、台車ならそこにあるっすよ」

台車はいつも置いてある隅っこに鎮座している。
「ああ、ありがとうございます」
「あ、ちょっと待ってほしいっす!」
いつもどおり台車を持って帰ろうとしたら、職人さんになぜか引き止められた。

「へ?」
「いや、大したことじゃないんすけどこの前、届いた品にいつもと違ってインゴットがあったんすけど
もしかしておたくさんっすか?」
「あ、はいそうですけど……何か問題でもありました?」
クレームかと思いビクビクする俺。

「いや問題なんてないっすよ、多少品質が悪くてもカッパーインゴットはいつでも需要があるっすからね」
ホッとする俺。でも粗悪ってことなのかと少し落ち込む俺。
「では何の用です?」
「鉱山から鉱石をうちに売って人達の中でインゴットに加工して持ってきた人は初めてだったんす。
だから珍しいなーとそれで少し興味を持っただけっす。もしかして独学っすか?」

「はい、特に人に教わったことはないですね」
いつもと違うものが入ってきたから気になったってところか。

クリスタル合成はイメージがだいじな作業であり、技術が介在する部分は少ない。
それゆえ俺は基本的な部分しか教わっていない。

材料を用意し完成品のイメージをクリスタルに移す。情報が飽和した社会で過ごしてきた俺は
様々なイメージを「知っている」。この前作った箸だってそうだ。ありふれてるけど知らない人に
イメージするのは難しい。
ただ、機械などの精密なものをつくるのは出来ないだろうけど。

「ふむふむ、そうっすか、クリスタル合成もいいっすけど、鍛冶の醍醐味はこの大きな炉で溶けたものを流し込み
鍛え上げ、作り上げることっす。……君も見てればイメージに多少役に立つかもしれないっす」
鍛冶については何も知らない俺にとってこれはありがたい。
あまり鍛冶の現場って見たことないしな……

「ではお言葉に甘えて!友人待たせてるのであまり見てられないのが残念ですけど」
ということで俺はじーっと作業を見守ることにした。
溶けてドロドロになっている鉱石を鋳型に注ぐ。研いで刃をつけ、そして柄を付ける。
それを大量に行なっている。どうやら作ってるのはナイフらしい。

「これは加工しやすい青銅で作ったナイフっす。あまり切れ味は良くないっすけどね」
他の職人さんも剣を作ったり、槍を作ったり、銃弾みたいなものも作っている。
その制作風景、完成品を見ることはクリスタル合成において大事なことだ。おっとお客さんみたいだ。

ちょうどいい頃合いだし、そろそろお暇しよう。そう思い俺は台車の取っ手を手に取る。
「忙しいところ失礼する。この前の軍の備品戦斧500本、石弓250本の納入の件だが……」
「そのことなら……ギルド長なんすけど、まだ出先から帰ってないみたいっすね」
「いないなら構わない、出直すことにするよ。ルシウスが来たとだけ伝えてくれ」
ルシウスと名乗る人物は目当ての人物がいなかったのか、すぐに帰ることにしたようだ。

「ふむ、君は……ツェールン鉱山で働いているのかね?」
と思ったが近くにいる俺に目をつけたらしい。
「ええ、しかしなぜそれを?」
「その台車、鉱山用に国が無償で貸し出しているものなのだ。それを持って行こうとしている君は鉱夫として
働いているのかと思ってね。ギルドの人間には見えないからな」
これおやっさんの私物だと思ってたよ……公共物だったのね。

「……理屈はわかりました、けど俺に何か?」
お偉いさんっぽいオーラが体を固くさせる。苦手でござる……
「そうだった、君は冒険者かい?」
「一応、身分的にはこの国の冒険者です」

冒険者らしいことはあまりしてないけど、冒険者ではあるので本当のことを言う。
「それなら話は早い……君にミッションを頼みたい」
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第3話

「ん…えーっと俺はどうしたんだっけ…?」
窓から差し込む光は眩しく、昨夜からだいぶ時間がたってることを思わせる。
取り敢えずここは俺のレンタルハウスみたいだな。ってか頭いてー…飲み過ぎたかな。

周りを見渡してみると、俺はちゃんとベッドで寝ていたらしい。
シーツがぐちゃぐちゃになってる点を除けば俺の近くに変わっている点はない。
取り敢えず水をのもうとベッドから起き上がってみると…何故か見覚えのある赤毛が床に突っ伏して寝ている。

どうやら熟睡してるみたいだ。疲れてるのかな…まだ寝かしてやろう。
…なんて言うとでも思ったか!
「おい、ジャン!起きろ!」
「…ふぁー…あ、ショウおはよう、うあ…体の節々が痛い、あと頭がいたい…」
「床に直接寝てたからな…頭がいたいのは俺も同じだ」
毛布をかけてあげるとかの気を利かせる余裕なんて俺には無いのさ。伊達に彼女いない歴年齢やってないぞ!

「というかなんでジャンはここにいるんだっけ?」
「えーっと多分、レンタルハウス借りる手続きがめんどくさかったんじゃないかな?」
「酔っ払って手続きはたしかにきついが、何故に疑問形?」
「僕も記憶が曖昧で…」
その点に関してはお互い様だな
「あのあとどうなったんだっけ…」
「えーっと…まてよ…」
そうして俺は昨夜の出来事を思い出してみることにしたのであった。


昨夜、あのまま俺達は変わらずしばらく3人で飲んでいた。
しばらく経つと、ピークの時間帯になってきたのか、冒険者を主とする客が多くやってきた。
まあそれでも俺たちは気にせず飲んだり食ったりしていた。

ここまではあまり普段と変わらなかったはずだ。
しばらくするととある冒険者のパーティーが店に入ってきた。
余談だが、冒険者2~6人からなる集団をパーティーと呼ぶらしい。
まあパーティーなんて冒険者になれば誰でも組むものだし、特に珍しいものでもない。

気にもとめなかった俺達だが、しばらくするとそいつらのテーブルの周りが騒がしくなった事に気づいた。
テーブルの周りにはこの店に来ていた冒険者が集まって、ここからはパーティーのテーブルは見えない。
「なにかあっちのほうが騒がしいみたいだね」
ジャンが気になるようにぼそっと呟く。

「俺も気になる。てことで見てくる、ちょっと待ってな」
てなわけで俺は人ごみの中に突入していくのであった。

近づいてみたけど、あまりよく見えないな…つかこの国の奴らが大きすぎるのが悪い!俺は日本人平均170cm
ちょっとあるけれど、ココの冒険者達は一回り大きい。
しかたないのでその場でぴょんぴょんと跳ねていると、見かねたのか俺の前にいる冒険者は場所を譲ってくれた。
ちょっと恥ずかしい。

どうやらそのパーティーは3人らしい。ヒューム2人に、あとこれはタルタルみたいだな。
ヒュームの一人は男性で、ブラウンの髪を短く切りそろえ流すようにしていて顔立ちはさわやか好青年な感じだ。
彼は目をつぶって腕を組んでなにか考えるような動作をしてる。
一人は女の子で前者の男性と同じブラウンの髪をしている。ボーイッシュで元気ハツラツそうな感じ。小動物を思わせる。
タルタルはわからん…あまり見分けつかないし。フードを深くかぶってるからなおさらだ。

タルタルというのは小柄で子どもくらいの大きさしか無い種族で、力はないが魔法に秀でた種族である。
バストゥークではあまり見かけない。まあ確かにここはタルタルには暮らしにくいだろなと思う。

彼らはテーブルに座りながら何やら話している。特に変哲のない普通の冒険者パーティーに見えるけど…
まあわからないときは周りの人に聞いてみよう。
テーブルの周りを囲んでいた冒険者の一人に話しかけてみる。

「あのー、何をこんなに騒いでるんですか?」
「ん…ああ、あいつらのテーブルの上にある、あの角を見てみろ」
ふむ、よく見ると彼らのテーブルの上には大きな角があることに気づいた。その角はねじくれて巨大で
その角を持った生物はどれほどの大きさがあるんだろう…と俺に想像を促す。

「で、その角がどうかしたんですか?珍しいもの?」
「ああ、珍しいといえば珍しいが、その角の持ち主はランページング・ラムという雄羊で
コンシュタット高地のそこそこ有名なノートリアスモンスターなんだ。
性格は凶暴で、ヘタに出会ったら命の危険もある。
そいつの角がここにあるってことは彼らはそれを倒したってことなのさ」

なるほど、聞いたことはないけど、凶暴なやつを倒したすごいパーティーってことか。
「ノートリアスモンスター?」
「ああ、それは…」
「ノートリアスモンスターっていうのは悪名高きモンスターって意味で、一体一体に個別の名前が付けられてる
モンスターのことなんだ。名前が付けられるだけあって、その地域にいるモンスターとはぜんぜん違う強さを
持ってることが多いです」

あら、彼が答えてくれる前にテーブルに座っていた女の子が答えてくれた。
「へぇーなるほど、ありがとう」
「ノートリアスモンスターなんてだれでも知ってると思ったけど」
「うーん、そのへんに関しては疎くてね」

この世界に半年いる俺だが、一般常識についてはまだ足りない部分が多い。ついでに色々聞いてみよう。
「ところでその角って高く売れたりするの?」
どうでも良い俗っぽい質問をする俺、まあ俺みたいな労働者はこういうのが一番気になるものである。

「うーん、この角自体には普通の雄羊の角の価値しかないけど、こういうの集めてる人なら高く買ってくれたり
するかもしれないって程度だね」
「へー、でも普通の価値しかないならなんでまた倒そうとしたんだ?あまり旨みがあるようには思えないけど」

命の危険を冒して強いモンスターを倒して、得るものが少ないなんて馬鹿らしいし…
「うーん、これは実は国から受けたミッションなんだ。コンシュタット高地で人に害をなしている
ランページング・ラムを倒してくれってね…報酬はこれを証拠に国からもらったから、この角は
ただの記念品くらいだね」

「なるほど、参考までに報酬はどれくらいもらったの?」
まあ俺みたいな労働者はこういうのが一番気になるものである(2度目)
「ふふふ、これくらいかな、ちなみに1,10,100ギル硬貨は入ってないよ」
そういうと女の子はカバンからじゃらじゃらと音を鳴らす小さな革袋を取り出した。

いくら入ってるかは分からないけど、じゃらじゃら音を鳴らせてる時点で少ないという考えは俺にはない。
それを見た他の冒険者はおぉー!と歓声を上げる者や。ほかにもすげー!とか、何故かよっしゃー!
という声まで聞こえる。まあ確かにすごいけど…よっしゃー?

「おいおい、ルティ……」
「ルティさん……」
ルティというのはその革袋を出した子の名前だろう。なぜか男の人とタルタルは呆れたような、笑ってるような
顔をしている。

「やれやれ……皆さん、今日は僕たちのおごりです!好きなだけ飲んだり食べたりしてください!」
パーティーの彼が大声でそう叫ぶと、客はどっと沸き立った。
「よっしゃ!ショウやるじゃねーか」

いつの間にか隣に来ていたおやっさんが、俺の背中をバンバン叩きながらいう。
「いてっ!えっ、何を?」
正直なにがなんだかわからない。

「この酒場のローカルルールみたいなもんなんだが、一仕事終えて大金稼いできたやつは
盛大におごらなくちゃいけないっていうちょっとした決まりがあるのさ」
まあここにしかないがな、とにやりとしながら付け加えるおやっさん。

「えーー、兄さん!そんなの聞いたことないよ!」
ルティという子は兄さんと呼ばれたさわやかな彼に詰め寄る。
「ここはそういうルールだってこと、ルティには言ってなかった……はは、ごめんごめん、まあ多く稼いだヤツ
がおごるってのはそう悪いことじゃあないよ、僕だって駆け出し冒険者だった頃はたくさん奢ってもらったしね」

「んー、なんか出させちゃったみたいでごめんなさい」
取りあえず謝罪を述べておく。そんな意図はなかったからね。
「いや、謝る必要なんか無いです。隠してるみたいにしてた僕達も悪いですしね。ここにいる人たち
分くらいは簡単に出せるくらいはもらったので気にしないでください」
「そうですか、ありがとう!頂きます」
「ええ」
なんて太っ腹な人なんだ。この喜びをジャンに伝えなければ!

「……おーい、ジャン!今日はこの人がおごってくれるってよ!だから俺の分エールもう一杯頼んでくれ!」
というわけでジャンの方に向かって吉報を伝える。
「え、ほんとに!?じゃあ僕もソーセージにもう一杯!ベークドポポトも欲しい!」

冒険者パーティーの3人はそろって目を丸くしながら見合わせている。俺の変わり身の早いこと早いこと。
冒険者というのは遠慮をしない生き物なのである。いや、鉱夫だっけ…?まあいいか

そしてその後好きなだけ飲んだり食ったりして、酔っ払った冒険者どもから
お前吟遊詩人なんだから歌ってくれよと言われて
「アニソン10連発でもいいの?」
「ショウって時々訳のわからないこと言うよね…」

ジャンがごちゃごちゃ言ってたけど無視してアニソンを10連続で歌ったりした、アカペラで。
なぜか、翔べ!ガンダムが盛り上がってた気がする。
昔のアニソンは勢いがあるね、うん。

ちなみに、吟遊詩人が主に使う楽器は、弦楽器、管楽器で俺が持ってるのはハープ、フルートだけである。
ギターでもあれば幅が広がっていいかもなぁ。
そうして時間が過ぎていき、騒がしい夜は続いていったのであった。

そして意識を戻す。
「で、あのあとどうやって帰ったんだっけ?」
「えーっとたしか…僕達飲み過ぎて寝ちゃってたよね」
「うん、それでおやっさんに起こされたんだ『お前ら起きろ、寝るなら家で寝ろ』ってね」

俺達は思い出すように確認していく。
「そのあと、なんとかここまでたどり着いたわけだね」
「みたいだな、あぁー思い出してきた。別れ際おやっさん最後に『明日は仕事休みにするか』って言ってた」
この状態でお仕事はきつい、うん。

「へえ、じゃあショウこれからどうするの?」
「そうだなぁまずは顔を洗って水を飲みたい、そのあとは飯を作る気力ないし……コウモリのねぐらでも行こう」
「オッケー、それじゃ行こうか」

ジャンはさあいこうというように俺を引っ張っぱる。
「…俺は金ださんぞ」
「えっ!?」
この極貧冒険者はもう…

「…えっ!?じゃない、まったく…まあ後でおごってくれたらいいよ」
「いやー、ショウはやさしいなぁ」
「ったく…とっとと行くぞ」
「おー!」
そうして俺達は家をあとにするのであった。

=====目次=====

第2話

コウモリのねぐらについた俺達は取り敢えずテーブル席につく。
まだピークの時間よりは早いのか、客足はまばらである。

この店はグリセルダというおばちゃんがやっていて、昔は旅人用の保存食くらいしか
出してなかったのだが、増える冒険者と開発が進むツェールン鉱山の労働者の要望で、酒と簡単な料理
もだすようになったらしい。

「おやっさんはなに頼みます?」
「そうだなとりあえずソーセージ、それにマトンのロースト、あとはベークドポポト」
「見事に肉ばっかりっすね、まあ腹減ったし、そうだな俺もソーセージにあとはアイアンパンそれと
ニシンの塩漬けにしよう、あと酒はエールでいいですかね?」
エールというのは、製法とかはしらんがビールより苦味は少なく、甘みがある感じだな。

「ああ、頼む」
「ああ、僕もそれで」
「んじゃ注文注文…」
ええっと、エールが3つ…ん?

「何ちゃっかり混じってるんだこの極貧冒険者!」
「ひどいなぁショウ、この僕にはジャンという名前があるというのに」
「おう、ジャンじゃねえか、一攫千金なんか目指したってそうそううまくはいかねえさ、だからお前も
鉱山にだな…」
「おやっさん…それは絶対にゴメンだね、僕はクールでスマートなシーフなのさ」
「クール(笑)スマート(笑)」

なぜかちゃっかり混じってきた、こいつの名前はジャン。
ジャンは、背は俺より頭一つ大きく、整った顔立ちでカッコいいともカワイイとも呼べる感じ、目は優しげで
肩辺りまで伸びた赤髪を流すようにしている。

ジャンは冒険者でシーフとして一攫千金目指して各地を回っているらしい。
それにしては貧乏だけど…たまに訳の分からない剣とか持ってきたりする。

ジャンはエルヴァーンという種族で、俺みたいなヒュームより背丈は大きく、耳が尖ってて
何より美形が多い種族である。まあ俺基準だけどね…この世界の美的感覚はよくわからんし…
こいつと知り合ったのは、大体3ヶ月くらい前、初対面の俺に飯をたかってきたのが最初。
なんで俺だったのかというと、何となくチョロそうだったかららしい。

「いいよお前は極貧冒険者で…まあとにかく久々だな、1ヶ月ぶりくらいか?
奢るから話し聞かせてくれよ」
「ありがたい、それじゃ僕もソーセージ欲しいなー」
「まったく、お前は図々しいなぁ…まあいいや、おばちゃーん!注文おねがーい」
「あいよー」
「それじゃエール3つにソーセージ3つ、マトンのローストに………」
俺はゆっくりと注文を述べていく。

「はい、それじゃすぐにもってくるからねー」

「んで、ジャンお前今回はどこ行ってたんだ?1ヶ月もいないなんて珍しい」
最初に出されたエールを飲みながらジャンに尋ねる。
「ああ、僕は今回ちょっと家に帰ってたんだ」
「家か、確かサンドリアって国にあるんだっけ?」

サンドリアは、正式にはサンドリア王国という。王様が治めている国で伝統のある騎士の国らしい。
「うん、僕長男だからさ…騎士として家継がなくちゃいけないということで
あまりふらふらするなって言われててね、で家帰ったらなかなか外出させてくれなくて」

そういえばこいつのことは極貧冒険者で、シーフやってるということくらいしかしらないな。
意外な一面を見た気分。

「で、どうやったんだ?シーフらしくこそっと抜けだしてきたのか?」
おやっさんが尋ねる。まあどうにか抜けだしてきたみたいだし、どうやったんだろう。
「手紙を置いて居なくなってたらカッコ良かったんだけどねー…実際のところ僕の騎士としての適性の無さ
とか如何にダメダメであるかを根気強く説明したら、呆れちゃってさ…なんとかなった」
「情けなさすぎだろ…」
予想の斜め下の理由だった…

「それじゃどうするんだ?家の方は、継ぐ人いないんじゃないのか?」
「ああ、それなら問題ないよ、僕よりずっと優秀で騎士に向いててやる気のある妹がいるからね」
てかこいつ妹なんていたのね…

「妹がいたなんて初耳だけど、じゃあ別にジャンを連れ戻す必要なんて特になかったんじゃないの?」
最初からやる気があって優秀な奴にやらせたほうがいいに決まってる。
「うん、そのとおりなんだけどね…まあそんな簡単にはいかないんだよね。体裁とか伝統とかあるし…」
うーん、こういうのは万国共通の問題なのかしら…

「ハッ、そんなんだから眠れる獅子とか言われちまうんだサンドリアは」
おやっさんはエールを一気に飲み干すとどうじにヘヘッと笑いながら言葉を吐き出す。
「はは、そういわれると耳が痛い問題だね…サンドリアはそこを直せばもっといい国になるのに」

「ソーセージおまたせー」
「おー待ってました!」
ジャンが歓声を上げる、こいつ人の金だと思って…
「というかおやっさん、ソーセージ来る前に一杯飲んじゃうとは早いっすね…」
思うにガルカという種族は酒に強いのではなかろうか…まあ見た目からして超強そうだけどね。
「まあな」

そういいつつおやっさんは既に2杯目を手にしている。うんそういう人だったね…
取り敢えず俺は届いたソーセージにかぶりつくことにする。このソーセージは羊肉を腸詰めにしたあと
燻製したもので、羊肉を使っているのが特徴といえば特徴かな。シンプルながら肉の旨味
羊に特有の臭みをスパイスで緩和し、ギュギュっとした肉々しいソーセージである。
やすいしうまい俺の主食の一つである。

「そういえばショウは冒険とかにでないの?一応冒険者なんだしさ」
ジャンが俺に尋ねてくる。まあジャンみたいにあっちへふらふらこっちへふらふらしてないけど。
「冒険かぁ、まあいろいろなところ行ってみたいって気持ちはなくはないけど、鉱山の仕事も結構安定
してるし結構気に入ってるんだよね」
注文したニシンの塩漬けをぱくつきながら答える。保存食だけあって塩味が強い。

丁度エールに合うし、アイアンパンにも合う。
アイアンパンというのは、固く焼き締められたガルカ伝統のパンらしいけど、まあフランスパンみたいな感じ
俺の主食の一つ。

「ショウはジョブ吟遊詩人だし、どこからも引っ張りだこだと思うよ」
ジョブというのは、その人がついている戦闘に関する職業をいう。戦士だったら前衛で剣を振るのが得意とか
白魔道士だったら魔法で仲間を癒すのが得意とかである。職業というよりその道のスペシャリストといったほうが
いいかな。冒険者は基本的に必ずジョブについている。

だから俺を表すとすると、水井晶(20) 職業:鉱夫 ジョブ:吟遊詩人 身分:冒険者 とでもいうか。
そして俺がついているのは、吟遊詩人というジョブで、特殊な効果のある歌を歌ったり、楽器を演奏
したりして、見方を強化したり、敵を弱体化させたりすることができるジョブである。

ジョブというのは20種類くらいあるらしいが、ジョブになるにはどうやら心得が必要らしい。
心得というものは、一概にいえるものではなく、気づいたらあったとかそういうこともあるらしい。

まあ基本的にナイトというジョブなら、サンドリアの騎士ならなれるし、狩人なら狩猟民、そういう人達
はジョブにつける事が多いらしい。あまりよくわかってないとのこと。
俺はなんだろうね…楽器を演奏したり歌は結構好きだったけど、そういうことなのかしら。

「そうだなショウ、お前は身分的には冒険者だし、視野を広げるってのも悪くはないと思うぜ、鉱山の
仕事だって無限にあるわけじゃないんだ。枯れたら終わりさ」
おやっさんがマトンのローストを豪快に食べながら俺に言う。確かにな

「それに俺だって鉱山だけでやっていこうと思ってるわけじゃないぜ」
「え!何か他にやってたんですか?」
「おう、言ってなかったが、俺はグスタベルグに畑持ってるのさ。ほとんど作物が育たねえ土地だから
こんな俺でも所有できるわけさ。今はポポトイモが植わってる」

グスタベルグはこの国バストゥークに隣接してる土地で、植物はあまり生えておらず
土と岩だらけの殺風景な土地である。北には川もあるが、鉱山の影響もあるのか飲み水としてはあまり適さない。
厳しい土地である。
「んー、おやっさんもなかなか考えてるんですねー」
「そうだよショウ、君ももっとよく考えなくちゃ」
「お前にだけは言われたくない」
極貧冒険者め

「…とにかく、だから結構不定期に休みあったんですね」
「うむ、どちらかと言うと今じゃこっちのが副業だからな」
まあそれ除いても週8日(こっちでは8日、決まった休みの日とかはない)のうち3日は休みだからなぁ。
週休3日とか…

「ところでショウって休みの日はなにしてるんだい?」
「…おー、定番の質問来たな…っていっても大したことはしてないぞ。楽器演奏したり、ブラブラふらついたり
釣りしたり、クリスタル合成の練習したりだな」
「へぇ~普通だね」

「やかましい、お前が聞いてきたんだろうが…それよりもジャンサンドリア行ってきたんだから何かなかったのか?
俺はコンシュタットくらいまでしか行ったことないしな、教えてくれよ」
「俺も気になるな…あまりこの国周辺から出ないからな」

「奢ってもらったしね、そうだ!こんな話があるんだけど…コンシュタット高地のデムの岩ってあるだろ?」
「まあ近くまで行ったことはないけど、あんなでかい訳のわからないものがどうかしたのか?」

コンシュタット高地は北グスタベルグを抜けたところにある土地で、グスタベルグとは打って変わって
高山性の植物が生息しており、動物層も豊かである。あと時たま強い風が吹くんだが、それはオーディン風
と呼ばれてるらしい。
デムの岩というのはそこにある謎の巨大建築物で、遠くから眺めた事しかないが、どのくらいだろ?
東京ドーム一個分くらい?誰が何のために建てたということも分かってないらしい。

「まあ今回の話はデムの岩本体とは関係ないんだ。その近くでね…地面から声が聞こえるんだ」
「おまえは何を言っているんだ…」
「いや、ほんとなんだよおやっさん…僕の頭がオカシイわけじゃあない何人も聞いてるんだ。
僕も聞いたしね…で、なんて言ってきたかというと、『鞄の中のもの、全部くれ』って」

「へぇ、まあ信じるよ…んでお前はどうしたんだ?」
魔法も当たり前にあるし、しゃべる地面があったっていいじゃないと思える俺は、この世界に馴染みすぎた
んだろうか…
「鞄の中のゴミというゴミを声の聞こえてきたほうの地面に埋めてやった、そしたら…」
「そしたら…?」
地面の神がお怒りになったとかかな…
「もっとくれ!!!って…」
「…ただの声がするゴミ捨て場じゃねーか!」
「うん…」
これがオチなのか?

第1話


「おーっし、ショウ、これ終わったら飲み行くぞついてこい!」
「あいっす!お伴します!」

今俺は確実に日本じゃない場所にいる。なぜかって?
この飲みに誘ってくれてる人がどう見ても人間じゃないからさ!日本にこんな人はいないよ。
灰色の肌、でかい図体、人間じゃありえないサイズ(ステロイド飲めばこれくらいいくかも)
それになんといっても尻尾が生えている。でも何故か日本語通じるんだよね。

そういう俺は今鉱山で鉱山夫として働いている。このテンションも動きながらだから仕方ないね。
学生やってた時、つるはし担いでトンカントンカンするとは思わなかったわ。
そうして俺は黙々と作業を続ける。あ、石ころだ、いらね。
半年近くこの作業をやってると結構慣れるものである。

ちなみに今俺がいるこの鉱山は、ツェールン鉱山と言ってバストゥークという国の中にあるらしい。
正式名称はバストゥーク共和国、選挙で選ばれる大統領が治める国である。
国の中にあるからアクセスはしやすく、今開発が進んでいるとのこと。

そういう事情プラスあまり人気のない職種というのも重なってか俺はなんとかこの仕事に
滑り込めたというわけである。日本でいう3Kに入るものね。
お、スズ石か…微妙だな。

俺達は採掘を終えて、今日の戦利品を確認し始めた。
「おやっさん、今日は鉄鉱石結構出ましたねー!」
「おう、そうだな、石つぶてとかスズ石は高くは売れねえからな。需要の多い鉄鉱石が出たのは儲け
もんだ。ま、黒鉄鉱が出れば最高だったんだがな」
「まあそんなうまくはいきませんよ、んじゃ飲み行きましょー、もちろんおやっさんのおごりで」
「ガッハッハ、まあいいだろ、ショウも頑張ってるしな」

この飲みに誘ってくれた、そして俺がおやっさんと呼んでいる人はガルカのグルヴォさん。
でかい図体に、ひげがわっさわっさ生えていて、髪の毛とつながっている。
顔はごついが、よくみると男前な顔立ちをしてるからわからないもんだ。

ガルカというのは先に言ったでかい図体、尻尾が生えてる種族のことをいう。
ちなみに俺みたいな見た目のやつをヒュームと呼ぶらしい。
そして俺を助けてくれたのもグルヴォさんである。

見知らぬ場所に飛ばされて、どうしようもなくふらふらふらついていて、空腹でもうダメだ
となったところグルヴォさんに見つかり保護されたのである。
その時のグルヴォさん曰く

「どうしてあんな所に行き倒れてたんだ…?あそこは鉱山の入り口に近いが、誰もいないことが多い
いわば死角にあたるところ…運が悪いのか」
まあそんなこんなで拾われて、鉱山夫として働くことになったわけである。
拾われて鉱山夫って、どうしようもなく人身売買臭がするけど、まあ結構満足してる。
グルヴォさんには感謝感謝である。

そうして今日のお勤めを終え、鉱石を乗せた台車を押しながら鉱山の入口まで戻る。
鉱山はバストゥーク国内の鉱山区というところにある。鉱山区はこのツェールン鉱山の開発で
結構賑わってるといえる。もっとも昔はガルカの労働者がつどう寂れた地区だったらしい。

「んじゃ、ショウ、とっととこいつを引渡しにいくとするか」
「ういっす」
俺とおやっさんは基本的に、大工房の鍛冶ギルドと契約を結んで、そこに鉱石を卸している。
大工房というのは政府の機能に、大きな工場を合わせたみたいなもので(自分でも意味不明)
もともとは砦だったらしい。そんなことはどうでもよいとして、俺達はそこの鍛冶ギルドに
この掘った鉱石を卸しているというわけである。

鉱山の外にでたはいいが誰も居ないな…いつもはこの時間あたりにギルドの人来てるんだけどなぁ。
そんなこんなで鉱山の入口近くで待っていると、一人の男がやってきた。
「お、グルヴォ今日もご苦労さん、早速そいつ預かるよ」
「お、カール来たか、これが今日の分だ」

このカールさんが、鍛冶ギルドの人である。いつも大体決まった時間にやってきて鉱石を鍛冶ギルド
まで持っていく。ヒュームの男性で年は俺よりだいぶ上、坊主に近い金の短髪で、彫りの深い顔立ち
鍛冶で鍛えられているのか、なかなか筋肉質な体である。

「ふむふむ、鉄鉱石に、スズ石、あとは銅鉱…このくらいの量となると大体…2000ギルといった
ところかな」
「おぉー、おやっさん今日は結構いい感じですね!」
だいたい0~3000位なので今日は結構いいほうである。0な日もあるしね…

ギルというのは、こっちの世界のお金の単位で、大体1ヶ月に10000ギルもあれば最低限の暮らしはできる。
ほんとに最低限だから、すごい苦しいけどね。だからこの2000ギルというのは結構なお金なのである。

まあ冒険者ならこのくらいはらくらく稼いじゃうそうだけど。
冒険者というのは、冒険に何らかの形で関わってる人を言うそうだが、まあ根無し草ともいう。
日本で言うなら個人事業者プラスフリーターみたいな感じ。

ちなみに鉱山で鉱夫として働いている俺だが、身分としてはバストゥークに所属する冒険者。
何故そんなややこしいことになってるかというと、冒険者という身分はとても美味しいのである。

冒険者は国から大きな援助を受けており、無料のレンタルハウス(俺もそこに住んでいる)
身分の保証、ほかにもいろんなところを行ったり来たりする人に得なものもあるらしい。
だから俺も冒険者になってるわけである。まあ20年前にあった戦争みたいに国の危機になったら
軍に編成されるとかいうことはあるけど…まあそれを除けば冒険者になることは得しかない。

「そうだ、グルヴォ、銅鉱はないのか?結構掘れると思うんだが」
「あぁ、それはショウのやつに任せてるんだ、加工したんだろ?見せてやれ」
「あぁ、ちょっと待って下さいね」

グルヴォさんに振られて、俺は背中のバックをゴソゴソと漁る。
そして4つのカッパーインゴットを取り出す。インゴットというのは金属の塊だ。金の延べ棒とか
もそう、これでいうなら銅の延べ棒ってやつかな。

「おお、これは…なかなか不純物も少ないしよく加工されてるじゃないか、1つあたり500ギルで買い取る
がどうだ?」

おぉ願ったり叶ったり、銅鉱の買取価格はインゴット1つ分で100ギルほど、これを加工するだけで
これだけ値段が上がるのか…日本でもそうだけど、こういうところで値段は上がっていくんだなあ。

「じゃあその値段でお願いします」
いつも世話になってるし、値段も悪くないしごねることなんかないしな。
「しかし、ショウ、いつのまにクリスタル合成なんか覚えたんだ?」
「うーん、安定してこれ加工できるようになったのは1週間くらいまえですかね」

俺はこのカッパーインゴットを作るのに鋳造、溶かして型にはめて…という方法を使ってない。
この世界にありふれているクリスタル合成という方法を使ったのである。

クリスタル合成とは何か?
端的にいうと、クリスタルを媒介にイメージを具現化させることで、物質の形状・性質を変化させる
生産手段とのこと。簡単に言うと、材料…例えば今回の銅鉱をインゴットを加工出来る量集めたあと
完成品を思い浮かべ、そしてそのイメージをクリスタルに映す…正直コレは感覚でやってるから
うまく説明できん。で、そうすると鋳造その他の工程抜きに銅の塊ができるというわけ。

日本だったら、紙とインクで紙幣イメージして、お金作成余裕でした!
できるといえば凄さが分かりそう。想像力がだいじな作業である。

クリスタルというのは様々なエネルギーを秘めた結晶体(らしい)で
生き物を倒す?と出てくる。鉱山のコウモリを倒したときも出てきたしな。
まあポンポン出てくるもんだからあまり価値はないんだけどね。

種類は炎、土、水、風、雷、氷、光、闇と8つあって、様々な特性を持っている。
炎のクリスタルは、燃焼のエネルギーを持っており、俺はこれをインゴットの加工に使ったというわけ。

「それじゃあ鉄鉱石、スズ石、カッパーインゴットを合わせて3600ギルで引き取るが、いいか?」
「ああ、頼む」
「直接渡そう、ではほれ」

カールさんはおやっさんにチャリチャリと貨幣を渡していく。ギルは硬貨で
1,10,100,1000,10000と単位分けされている。だから今日もらったのは1000ギル硬貨3つに100ギル
硬貨6つというわけだ。カンタンダネ。
ちなみにギルは偽造防止のため、魔法の透かし彫りが入っているとのことで、合成で通貨偽造余裕でした…
はできないらしい。

「よし、たしかに渡した。では俺は失礼させてもらう」
そうするとカールさんは、おもむろに羊皮紙をとりだし、買い取った鉱石が乗ってる台車を持ちながら
「それじゃ、俺は戻らせてもらう、すまんがこの台車は後で取りに来てくれ」
「あいよ」

まあ日課だしね。それを聞いたあと、カールさんが羊皮紙を掲げると、カールさんと台車は空中に
現れた黒い渦に巻き込まれ消えてしまった。

「まったく、呪符デジョンってのは便利なもんだな。カールの野郎経費で落ちるからってガンガン
使いやがる」
「ですねー、俺らじゃホイホイ使うわけには行きませんもんね」

正直初めて見たときはすごい驚いた。呪符デジョンというのは、デジョンという魔法を封じた羊皮紙で
ある。デジョンは自分が決めた拠点(ホームポイントというらしい)に戻れる魔法で、カールさんは
鍛冶ギルドに設定しているらしい。これがあったら通勤ラッシュなんて無いんだろうなーと思う。
まあご覧のとおりこの世界は魔法が普通にあるらしい、それがわかればOKである。

「よっし、んじゃこれがショウの取り分だ」
お待ちかねの分配タイム…現ナマを受け取るこの感覚。給料銀行振込の現代じゃなかなか味わえないな。
チャリチャリとお金をいただく。
「あれ、おやっさん、ちょっと多いっすよ」

おやっさんとの仕事をやる上での取り決めで取り分は半々としたはずだけど、今俺が受け取ったのは
2000ギル、おやっさんより400ギル多い。
「ショウが加工してくれたおかげで、これだけもらえたんだ。当然の権利だ」
そんなこといったらおやっさんから受けた恩を考えると俺を奴隷労働させる権利もあるレベル。

「うーん、そうはいってもなぁ…んじゃ、この多くもらった分使って飲み行きましょうや!」
「ガッハッハ、ショウがそういうんじゃしゃあねえ、んじゃコウモリのねぐらに行くとするか!」
「ういっす!」

コウモリのねぐらというのはねぐらという文字通り宿屋なのだが、料理や酒も出している。
冒険者も多く集まり、夜は賑やかな場所になる。ちょうど日が暮れてきた頃だしちょうどいいかな。
俺とおやっさんは仕事が終わったあとは大体そこにいく。

レンタルハウスで自炊してもいいんだが、肉体労働の後だときついしな…
そうして俺とおやっさんはコウモリのねぐらに向けて歩き出した。

プロローグ

水井晶(ミズイ ショウ)それが俺の名前だ。
この名前のおかげか、小学校で皆が漢字を理解する頃にはあだ名はスイショウ
個人的にはこの呼ばれかたは嫌いじゃない。

年齢は20 大学生で今は3年 家族は両親と姉が一人。家族仲はいいと思う。
今は大学の講義が終わって家に帰ろうとゆっくり歩いているところだ。

正直俺ははダメ人間である。それは能力が特別劣っているというわけではなく性格がである。
自分で言うのもあれだけど性根が腐ってるというか…
今通ってる大学だって受験で楽をしたいからといってレベルを下げて決めたところだし
俺の人生において、精一杯やったことは何ですか?と聞かれても
いくらか時間をもらって考えこんでも何も出てこないというレベルである。
そんなこんなで楽なほう楽なほうで流されていった結果が今の俺というわけである。

でもこんな生き方を俺はキライというわけじゃない。
聞く人が聞けば甘っちょろい腑抜けとか言われそうだけど必要ない苦労はしないというのが俺のポリシーである。

さて俺水井晶は大学生という身分を最大に使って最高にぐうたらな生活を送っている。
講義はサボって家で寝ていたり、程々に切り上げてぶらぶら街を練り歩いたり、友人と一晩中呑んだくれたり
大学の広い図書館で本を積み上げて読んだり、家で楽器を打ち鳴らしたり、やりたいことをすきなようにやっている。

「さて今日はどうしようかな」
そんな俺が、今日ある特別につまらない講義をサボらないはずもなく
今日の残りは自由時間というわけである。

今は大体昼の12時をいくらか過ぎたくらい、まだ昼飯は食べてないし
昼飯食べてからどうするか考えよう。
そうして俺の悩みは今日の昼飯をどうするかということに移ったのであった。

キャンパス内の普段あまり人が居ないベンチ(お気に入り)に座り、考える。
うーん…A定食にするかB定食にするか…無難にカレーもいいが…ラーメンはあまり美味しくないし
定食だとはずれもあるしな…いい天気だし外で食べるのもいいかもしれない。
まあ取り敢えず学食に行ってから考えよう。

そんなこんなで行動方針を決定して立ち上がろうとした時、頭に割れるような痛みが走る。
「ぐっ…なんだこれ…」
生まれてこの方病気らしい病気にはかかったことのない俺でも明らかに異常だとわかる痛み。
何かで頭の中をグリグリとかき回されてるような感覚。

「…はぁこれまずいかも」
誰か人…いないか…ここは人気がないところだし…
頭がボーッとしてきた…だけど痛みのせいで意識はまだ保っている。

「クリスタルに還りましょう…」
俺の頭の中に男性とも女性ともつかない声が響き渡る。
頭がおかしくなったのか…それでもおかしくない、この痛みじゃそうもなる。
頭の痛みはますます強くなっていきそれと同時に、頭の中の声も更に大きくなっている。

「大丈夫、心配することはないのです…クリスタルに還りましょう…」
死ぬってことか?でもこの痛みを止めてくれるならそれでもいいと思ってしまう。
そして頭の痛みの中、ついに俺の意識はだんだんに薄れていく

だけど不思議な安心感がある。このまま身を委ねても大丈夫だと、この声はすべてを受け入れてくれる。
そうだな…クリスタルに還るというのはどんなことだかわからないけど
こういう事なら悪くない。
そうして俺は意識を失った。
プロフィール

あれまれま

Author:あれまれま
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