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第8話

「さて、では揃ったことだし向かいますか」
現在はだいたい昼を過ぎたあたり、準備の段階で適当に急いでその辺にあるものを口に入れたため、特別腹は
減っていない。

「えーと滝まではどれくらいかかる予定?」
「ん~、そうですね……時間にしては今から行ったら、明日の夜になるくらいですね、
夜営地には半日かかるかかから無いかくらいだと思います。
急いでいけばもう少し早くつきますけど、夜進むのはなるべく避けたいので
途中で夜営することになると思います」

ふむ、大統領補佐のルシウスさんから受けたミッションの期限はまだまだ余裕あるし
明日は普通の休日だけど、明後日は疲れて鉱山仕事なんか出来ないかもなぁ……
まあサボっても特に何もないというすごい職場だけど……おやっさんは俺が来る前に一人でもやってたしね。

帰りの時間を考慮に入れてないのは、皆デジョンの呪符を持っているからである。
デジョンというのは自分の決めた拠点に戻ることのできる魔法で、呪符というのはその魔法が封じられている
羊皮紙である。使い捨てだけどすごい便利なもので一度使うともう普通に帰るのはいや!と言いたくなるほど
基本的に冒険者は常備しているといってもいい。

「ありがと、質問はもうないよ」
急ぎではないが、のんびりしすぎると日が暮れてしまうからな。

「よし、では出発しますか」
このパーティーではルース君がリーダーを務めるようだ。俺よりベテランだし、ジャンは向いてなさそう
だから、当然かな。もちろん異論はない。ルース君は雰囲気がリーダーぽいからな……

「お~!」
ジャンが気の抜けるような掛け声をかける。
まあそんな大層な依頼でもないし、こんな感じで行くとしますか!

さて、滝まではどう行くんだったっけ……。前行ったときは適当に進んでいったからなぁ。あの時は食料も
野営の準備もろくにしないで勢いだけで進んでたし……よく生きてたな俺。
しかし今回の俺はただついていくだけで問題無いというところが楽なところである。

今は先頭がルース君、次にラピピさんとルティが並んで、最後尾に俺とジャンという隊列で進んでいる。
……体の小さなラピピさんが俺らと同じくらいのスピードで無理せず進んでいるのは驚いた。

今のところは街道も整備されて快適な旅である。現在の場所南グスタベルグは荒れた土地で、雨も少なく
岩と土の支配する土地であるが、国に近いこの場所ではそんなところでも育つことのできるポポトイモや
たまごナスが植えられた畑がポツポツとある。

おやっさんの畑はどの辺にあるんだろうなぁとか考えたりおしゃべりも交えながら俺達は進んでいく。
俺とジャンが適当な冗談を交わしたり、ラピピさんが先頭のルース君にちょっかいを出したり、それにルティ
が便乗したり、更に俺達が便乗したり(悪ノリ)とまあこんな道中である。

襲ってくるモンスターとかもおらず、平和と言う一言に尽きる。40~50cmはあるハチとか、俺の腰くらいある
ミミズとか、わけわからない動く(発芽した)種などなど、いくらでも見かけたりはするけど、襲ってきたり
はしないし、俺はいちいち驚いたりはしない。
さすがに6ヶ月もいりゃこうなるのさ!
なんか順応し過ぎて怖いレベル、言葉が通じるのが大きいんだろうなぁ。

まだまだ先は長い、どうせだし歩いている皆の様子を見てみる。ルース君は度々地図を見ながら道を確認
している、もはや俺の中でのリーダー像が確定するほどの働きっぷり、そして、ラピピさんと確認しあったり
している。ラピピさんは参謀的な感じかしら。ルティは2人をニヤニヤしながら見ている。

2人は怪しいって言ってたし、それをウォッチングするのに忙しいのだろう。
ジャンは度々新しく買った短剣を腰から抜き眺め、戻し、眺めを繰り返している。
まあ何もしてないようなもんだし、ちょいと思ったことでも聞いてみよう。

「そういやジャンよ」
短剣を眺めていたジャンが腰に戻し、反応する。
「ん、何だい?」
「お前って地図とか持ってるの?」

ルース君の地図を見る姿を見て、ちょっと気になったことである。
こいつのことだから持ってないだろうな……俺も持ってないし。
「ん、もちろん持ってるけど?とはいえ主要な3国周辺の地図くらいしかないんだけどね」
何だ持ってるのか、ジャンのことだから星を見てそれを頼りに移動してそうなのに……

「なんだ、お前のことだから持ってないと思ったよ」
「いや、冒険者の必需品といってもいいくらいだと思うけど……ショウは持ってないのかい?」
「ぐっ……持ってないな」
逆に俺が無知を晒すことになってしまった。知らない事自体は恥ずかしいことじゃないけど
必需品とか言ってるしなあ。

「はは、ショウってたまに抜けてるとこあるよね。当たり前のこと知らなかったり、準備とかきっちりするのに
地図持ってなかったり」
「お前に言われたくはないわいっ!」
食料なしとかさすがの俺でもそれはないぞ!
地図なんかなくても国から出ないし、なくてもなんとかなるさ!多分。

「お二人は仲がよろしいんですのね」
とまあこんなやりとりをジャントしていたところ。
前を歩いていたラピピさんがニコッとしながら俺たちに話しかけてきた。

こうして見るとラピピさんは穏やかそうな人だなあという印象を受けるな。なんか毒吐いてた気もするけど……
「そうかな?仲がいいというよりは……そうだなー、ダメだとわかっててもお金を貸してしまう借主と貸主
の関係みたいな感じ?うまく例えられないな」

「いや、そこは仲良いでいいんじゃないかな?」
「ハハハ」
「もう!」
ジャンがぷすっとむくれる。つか俺より大きいイケメンがぷすっとしててもな……

「ふふ、十分仲いいではありませんか。お二人の付き合いは長いんですの?」
そう聞かれるとあまり長い付き合いでもないな。身も蓋もないこと
をいえばそもそもこの世界自体の付き合いが短いしな。しかもこいつはふらっとどこかへ行って
いつの間にか居るとかそんな感じのやつだったからなぁ。

「うーん……付き合い自体は長くないな、出会って半年にならないくらいだ」
「そうだね、たしか僕がショウと会ったのはね。確か何ヶ月か前えの話しさ、その時の話聞くかい?」

「ぜひ聞いてみたいですわ」
「私も聞きたいな」
「僕も興味ありますね」

おっと、ルース君にルティも食いついてきた。こいつとあったときはどうだったかなぁ……。
とまあ俺が考え込んでいるとジャンが説明をしだした。
「よろしい、では失礼して。……僕とショウが会ったのは確か数カ月前のコウモリのねぐら、あの君たちに
食事とお酒をおごってもらったところさ。その日僕はパルブロ鉱山というクゥダフたちのねぐらになっている
鉱山を散策した戦利品を持っていって、僕が座ったテーブルに広げた。
すると客は僕の持つ品物の珍しさにテーブルの周りに集まり始めちゃってね。參ったよ……
で、みんな離れてくれないから僕は言ったんだ。

『珍しいのは分かったから、なにか食べ物をくれないか?何でもいい』
ってね。そうしたところ、客の一人が『このめずらしいものを見せてくれたお客
さんに何か食べ物をやってくれ、もちろんお代は俺が出す。そのかわりそれについて色々聞かせてくれないか?』
といった客がいてね。それがショウだったというわけさ」

ジャンは語りきったというしたり顔を浮かべている。
「なかなかロマンのある出会いですわね」
「ジャンさんってちょっぴりダメな人かなと思ってたけど、そんなことないんだね」
「珍しい品物……興味ありますね」
皆がそれぞれに感想を述べている、おおむねジャンはトレジャーハンターとしてなかなかのものなんだろうな
とか思ってることだろう。しかし

……ん?なんかおかしいぞ。おかしいというか事実と違うというか。
ジャンがコウモリのねぐらに来たところまでは事実、しかしジャンが持ってきたのはよくわからない人形の手足
で、客は一瞬だけ集まったが、さっと同じように一瞬で去っていってしまった。どう見てもガラクタだったしな。

その時点で色々とおかしいけど、その後のジャンはというと、誰も居なくなったテーブルの上で突っ伏して
動かなくなっていた。俺はなんとなく気の毒に思って
『いやー、そのなんだ?人形も悪くないよ。ここのやつらはひと目で分かるすごいものを好むみたいだから』

と声をかけたところ、動かないから。
『おい、大丈夫か?』
と体を揺すってみたところ

『お腹すいた……何か食べ物……』
とか何とかもぞもぞ喋っていたので
『頼めないなら俺が代わりに頼んでやろうか?』
という小さな親切心をだしたのだけれど

『実はもう手持ちがないんだ……これあげるから食べ物もらえないかい?』
『いや、いらないけど……』
正直全くいらない。よくわからない人形の手足?だいたい手足だけって……

で、正直にそう返したところ、そいつは見るからに落ち込んで、全く動かなくなってしまった。
だから俺は仕方なく
「ああもう!しょうがないなその人形はいらないけど飯くらいなら食わせてやるよ!」
そういった瞬間、ジャンの顔はぱっと輝いて

「ほんとかい!」
もしかして演技だったのかと思えるほどの変わりぶりに戸惑う。
まあいいか。

「……言ってしまったものはしょうがないからな、いいよ大して高いメニューがあるわけじゃなし、好きなもの
頼んでくれ」
「わあ、ありがとう……!」
「うおっ……抱きつくなっ!男に抱きつかれてもうれしくないわっ!」
「そう?じゃあこの人形でも……」
「それはいらないです」

「ハハハ」
ハハハじゃないよまったく……

あいつの性質の片鱗はすでに会ったときから見えてたんだな……
とまあ思い出してみたところ、ジャンの話はもはやファンタジーだなこりゃ。
正直なところ訂正するのもめんどくさい……

俺はジャンを肘でつついて
「おい、なにへんな物語つくってんだよ」
するとジャンは小声で俺に耳打ちする。

「ふふ、軽い冗談だよ」
「まあいいけどさ、あんま期待値上げすぎんなよ?がっかりする姿が目に浮かぶからな……」
「大丈夫大丈夫、冒険者なんて今日つき会う人と明日付き合う人が違うものだしね。
ダメダメジャンさんのまま別れるよりいいかなーと思ってね」

一理あるといえばあるな、冒険者というものは一応評判とかを気にするものだからな。いい評判が立てば
仕事だって舞い込んで来ることがあるらしいし。別に俺は冒険者としての評判とかは気にしないしね。
「まったく、俺は別に構わないけど、せいぜいボロがでないよう気をつけろよ?……まったく、後で何かおご
ってくれよ」

「ふふ、まかせといてよ」
「期待せずに待ってるわ」
まあこいつのことだしな。

「まったく、そこは大いに期待して待つところだよ?」
「へいへい」
期待して待ってますともさ

「そこの二人ー遅れてるよーこのままじゃ明日になっちゃうよ」
おっと、気づいたら集団から少し遅れてしまったらしい。
俺たちは顔を見合わせ、かけていくのであった。
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