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第2話

コウモリのねぐらについた俺達は取り敢えずテーブル席につく。
まだピークの時間よりは早いのか、客足はまばらである。

この店はグリセルダというおばちゃんがやっていて、昔は旅人用の保存食くらいしか
出してなかったのだが、増える冒険者と開発が進むツェールン鉱山の労働者の要望で、酒と簡単な料理
もだすようになったらしい。

「おやっさんはなに頼みます?」
「そうだなとりあえずソーセージ、それにマトンのロースト、あとはベークドポポト」
「見事に肉ばっかりっすね、まあ腹減ったし、そうだな俺もソーセージにあとはアイアンパンそれと
ニシンの塩漬けにしよう、あと酒はエールでいいですかね?」
エールというのは、製法とかはしらんがビールより苦味は少なく、甘みがある感じだな。

「ああ、頼む」
「ああ、僕もそれで」
「んじゃ注文注文…」
ええっと、エールが3つ…ん?

「何ちゃっかり混じってるんだこの極貧冒険者!」
「ひどいなぁショウ、この僕にはジャンという名前があるというのに」
「おう、ジャンじゃねえか、一攫千金なんか目指したってそうそううまくはいかねえさ、だからお前も
鉱山にだな…」
「おやっさん…それは絶対にゴメンだね、僕はクールでスマートなシーフなのさ」
「クール(笑)スマート(笑)」

なぜかちゃっかり混じってきた、こいつの名前はジャン。
ジャンは、背は俺より頭一つ大きく、整った顔立ちでカッコいいともカワイイとも呼べる感じ、目は優しげで
肩辺りまで伸びた赤髪を流すようにしている。

ジャンは冒険者でシーフとして一攫千金目指して各地を回っているらしい。
それにしては貧乏だけど…たまに訳の分からない剣とか持ってきたりする。

ジャンはエルヴァーンという種族で、俺みたいなヒュームより背丈は大きく、耳が尖ってて
何より美形が多い種族である。まあ俺基準だけどね…この世界の美的感覚はよくわからんし…
こいつと知り合ったのは、大体3ヶ月くらい前、初対面の俺に飯をたかってきたのが最初。
なんで俺だったのかというと、何となくチョロそうだったかららしい。

「いいよお前は極貧冒険者で…まあとにかく久々だな、1ヶ月ぶりくらいか?
奢るから話し聞かせてくれよ」
「ありがたい、それじゃ僕もソーセージ欲しいなー」
「まったく、お前は図々しいなぁ…まあいいや、おばちゃーん!注文おねがーい」
「あいよー」
「それじゃエール3つにソーセージ3つ、マトンのローストに………」
俺はゆっくりと注文を述べていく。

「はい、それじゃすぐにもってくるからねー」

「んで、ジャンお前今回はどこ行ってたんだ?1ヶ月もいないなんて珍しい」
最初に出されたエールを飲みながらジャンに尋ねる。
「ああ、僕は今回ちょっと家に帰ってたんだ」
「家か、確かサンドリアって国にあるんだっけ?」

サンドリアは、正式にはサンドリア王国という。王様が治めている国で伝統のある騎士の国らしい。
「うん、僕長男だからさ…騎士として家継がなくちゃいけないということで
あまりふらふらするなって言われててね、で家帰ったらなかなか外出させてくれなくて」

そういえばこいつのことは極貧冒険者で、シーフやってるということくらいしかしらないな。
意外な一面を見た気分。

「で、どうやったんだ?シーフらしくこそっと抜けだしてきたのか?」
おやっさんが尋ねる。まあどうにか抜けだしてきたみたいだし、どうやったんだろう。
「手紙を置いて居なくなってたらカッコ良かったんだけどねー…実際のところ僕の騎士としての適性の無さ
とか如何にダメダメであるかを根気強く説明したら、呆れちゃってさ…なんとかなった」
「情けなさすぎだろ…」
予想の斜め下の理由だった…

「それじゃどうするんだ?家の方は、継ぐ人いないんじゃないのか?」
「ああ、それなら問題ないよ、僕よりずっと優秀で騎士に向いててやる気のある妹がいるからね」
てかこいつ妹なんていたのね…

「妹がいたなんて初耳だけど、じゃあ別にジャンを連れ戻す必要なんて特になかったんじゃないの?」
最初からやる気があって優秀な奴にやらせたほうがいいに決まってる。
「うん、そのとおりなんだけどね…まあそんな簡単にはいかないんだよね。体裁とか伝統とかあるし…」
うーん、こういうのは万国共通の問題なのかしら…

「ハッ、そんなんだから眠れる獅子とか言われちまうんだサンドリアは」
おやっさんはエールを一気に飲み干すとどうじにヘヘッと笑いながら言葉を吐き出す。
「はは、そういわれると耳が痛い問題だね…サンドリアはそこを直せばもっといい国になるのに」

「ソーセージおまたせー」
「おー待ってました!」
ジャンが歓声を上げる、こいつ人の金だと思って…
「というかおやっさん、ソーセージ来る前に一杯飲んじゃうとは早いっすね…」
思うにガルカという種族は酒に強いのではなかろうか…まあ見た目からして超強そうだけどね。
「まあな」

そういいつつおやっさんは既に2杯目を手にしている。うんそういう人だったね…
取り敢えず俺は届いたソーセージにかぶりつくことにする。このソーセージは羊肉を腸詰めにしたあと
燻製したもので、羊肉を使っているのが特徴といえば特徴かな。シンプルながら肉の旨味
羊に特有の臭みをスパイスで緩和し、ギュギュっとした肉々しいソーセージである。
やすいしうまい俺の主食の一つである。

「そういえばショウは冒険とかにでないの?一応冒険者なんだしさ」
ジャンが俺に尋ねてくる。まあジャンみたいにあっちへふらふらこっちへふらふらしてないけど。
「冒険かぁ、まあいろいろなところ行ってみたいって気持ちはなくはないけど、鉱山の仕事も結構安定
してるし結構気に入ってるんだよね」
注文したニシンの塩漬けをぱくつきながら答える。保存食だけあって塩味が強い。

丁度エールに合うし、アイアンパンにも合う。
アイアンパンというのは、固く焼き締められたガルカ伝統のパンらしいけど、まあフランスパンみたいな感じ
俺の主食の一つ。

「ショウはジョブ吟遊詩人だし、どこからも引っ張りだこだと思うよ」
ジョブというのは、その人がついている戦闘に関する職業をいう。戦士だったら前衛で剣を振るのが得意とか
白魔道士だったら魔法で仲間を癒すのが得意とかである。職業というよりその道のスペシャリストといったほうが
いいかな。冒険者は基本的に必ずジョブについている。

だから俺を表すとすると、水井晶(20) 職業:鉱夫 ジョブ:吟遊詩人 身分:冒険者 とでもいうか。
そして俺がついているのは、吟遊詩人というジョブで、特殊な効果のある歌を歌ったり、楽器を演奏
したりして、見方を強化したり、敵を弱体化させたりすることができるジョブである。

ジョブというのは20種類くらいあるらしいが、ジョブになるにはどうやら心得が必要らしい。
心得というものは、一概にいえるものではなく、気づいたらあったとかそういうこともあるらしい。

まあ基本的にナイトというジョブなら、サンドリアの騎士ならなれるし、狩人なら狩猟民、そういう人達
はジョブにつける事が多いらしい。あまりよくわかってないとのこと。
俺はなんだろうね…楽器を演奏したり歌は結構好きだったけど、そういうことなのかしら。

「そうだなショウ、お前は身分的には冒険者だし、視野を広げるってのも悪くはないと思うぜ、鉱山の
仕事だって無限にあるわけじゃないんだ。枯れたら終わりさ」
おやっさんがマトンのローストを豪快に食べながら俺に言う。確かにな

「それに俺だって鉱山だけでやっていこうと思ってるわけじゃないぜ」
「え!何か他にやってたんですか?」
「おう、言ってなかったが、俺はグスタベルグに畑持ってるのさ。ほとんど作物が育たねえ土地だから
こんな俺でも所有できるわけさ。今はポポトイモが植わってる」

グスタベルグはこの国バストゥークに隣接してる土地で、植物はあまり生えておらず
土と岩だらけの殺風景な土地である。北には川もあるが、鉱山の影響もあるのか飲み水としてはあまり適さない。
厳しい土地である。
「んー、おやっさんもなかなか考えてるんですねー」
「そうだよショウ、君ももっとよく考えなくちゃ」
「お前にだけは言われたくない」
極貧冒険者め

「…とにかく、だから結構不定期に休みあったんですね」
「うむ、どちらかと言うと今じゃこっちのが副業だからな」
まあそれ除いても週8日(こっちでは8日、決まった休みの日とかはない)のうち3日は休みだからなぁ。
週休3日とか…

「ところでショウって休みの日はなにしてるんだい?」
「…おー、定番の質問来たな…っていっても大したことはしてないぞ。楽器演奏したり、ブラブラふらついたり
釣りしたり、クリスタル合成の練習したりだな」
「へぇ~普通だね」

「やかましい、お前が聞いてきたんだろうが…それよりもジャンサンドリア行ってきたんだから何かなかったのか?
俺はコンシュタットくらいまでしか行ったことないしな、教えてくれよ」
「俺も気になるな…あまりこの国周辺から出ないからな」

「奢ってもらったしね、そうだ!こんな話があるんだけど…コンシュタット高地のデムの岩ってあるだろ?」
「まあ近くまで行ったことはないけど、あんなでかい訳のわからないものがどうかしたのか?」

コンシュタット高地は北グスタベルグを抜けたところにある土地で、グスタベルグとは打って変わって
高山性の植物が生息しており、動物層も豊かである。あと時たま強い風が吹くんだが、それはオーディン風
と呼ばれてるらしい。
デムの岩というのはそこにある謎の巨大建築物で、遠くから眺めた事しかないが、どのくらいだろ?
東京ドーム一個分くらい?誰が何のために建てたということも分かってないらしい。

「まあ今回の話はデムの岩本体とは関係ないんだ。その近くでね…地面から声が聞こえるんだ」
「おまえは何を言っているんだ…」
「いや、ほんとなんだよおやっさん…僕の頭がオカシイわけじゃあない何人も聞いてるんだ。
僕も聞いたしね…で、なんて言ってきたかというと、『鞄の中のもの、全部くれ』って」

「へぇ、まあ信じるよ…んでお前はどうしたんだ?」
魔法も当たり前にあるし、しゃべる地面があったっていいじゃないと思える俺は、この世界に馴染みすぎた
んだろうか…
「鞄の中のゴミというゴミを声の聞こえてきたほうの地面に埋めてやった、そしたら…」
「そしたら…?」
地面の神がお怒りになったとかかな…
「もっとくれ!!!って…」
「…ただの声がするゴミ捨て場じゃねーか!」
「うん…」
これがオチなのか?
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