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第3話

「ん…えーっと俺はどうしたんだっけ…?」
窓から差し込む光は眩しく、昨夜からだいぶ時間がたってることを思わせる。
取り敢えずここは俺のレンタルハウスみたいだな。ってか頭いてー…飲み過ぎたかな。

周りを見渡してみると、俺はちゃんとベッドで寝ていたらしい。
シーツがぐちゃぐちゃになってる点を除けば俺の近くに変わっている点はない。
取り敢えず水をのもうとベッドから起き上がってみると…何故か見覚えのある赤毛が床に突っ伏して寝ている。

どうやら熟睡してるみたいだ。疲れてるのかな…まだ寝かしてやろう。
…なんて言うとでも思ったか!
「おい、ジャン!起きろ!」
「…ふぁー…あ、ショウおはよう、うあ…体の節々が痛い、あと頭がいたい…」
「床に直接寝てたからな…頭がいたいのは俺も同じだ」
毛布をかけてあげるとかの気を利かせる余裕なんて俺には無いのさ。伊達に彼女いない歴年齢やってないぞ!

「というかなんでジャンはここにいるんだっけ?」
「えーっと多分、レンタルハウス借りる手続きがめんどくさかったんじゃないかな?」
「酔っ払って手続きはたしかにきついが、何故に疑問形?」
「僕も記憶が曖昧で…」
その点に関してはお互い様だな
「あのあとどうなったんだっけ…」
「えーっと…まてよ…」
そうして俺は昨夜の出来事を思い出してみることにしたのであった。


昨夜、あのまま俺達は変わらずしばらく3人で飲んでいた。
しばらく経つと、ピークの時間帯になってきたのか、冒険者を主とする客が多くやってきた。
まあそれでも俺たちは気にせず飲んだり食ったりしていた。

ここまではあまり普段と変わらなかったはずだ。
しばらくするととある冒険者のパーティーが店に入ってきた。
余談だが、冒険者2~6人からなる集団をパーティーと呼ぶらしい。
まあパーティーなんて冒険者になれば誰でも組むものだし、特に珍しいものでもない。

気にもとめなかった俺達だが、しばらくするとそいつらのテーブルの周りが騒がしくなった事に気づいた。
テーブルの周りにはこの店に来ていた冒険者が集まって、ここからはパーティーのテーブルは見えない。
「なにかあっちのほうが騒がしいみたいだね」
ジャンが気になるようにぼそっと呟く。

「俺も気になる。てことで見てくる、ちょっと待ってな」
てなわけで俺は人ごみの中に突入していくのであった。

近づいてみたけど、あまりよく見えないな…つかこの国の奴らが大きすぎるのが悪い!俺は日本人平均170cm
ちょっとあるけれど、ココの冒険者達は一回り大きい。
しかたないのでその場でぴょんぴょんと跳ねていると、見かねたのか俺の前にいる冒険者は場所を譲ってくれた。
ちょっと恥ずかしい。

どうやらそのパーティーは3人らしい。ヒューム2人に、あとこれはタルタルみたいだな。
ヒュームの一人は男性で、ブラウンの髪を短く切りそろえ流すようにしていて顔立ちはさわやか好青年な感じだ。
彼は目をつぶって腕を組んでなにか考えるような動作をしてる。
一人は女の子で前者の男性と同じブラウンの髪をしている。ボーイッシュで元気ハツラツそうな感じ。小動物を思わせる。
タルタルはわからん…あまり見分けつかないし。フードを深くかぶってるからなおさらだ。

タルタルというのは小柄で子どもくらいの大きさしか無い種族で、力はないが魔法に秀でた種族である。
バストゥークではあまり見かけない。まあ確かにここはタルタルには暮らしにくいだろなと思う。

彼らはテーブルに座りながら何やら話している。特に変哲のない普通の冒険者パーティーに見えるけど…
まあわからないときは周りの人に聞いてみよう。
テーブルの周りを囲んでいた冒険者の一人に話しかけてみる。

「あのー、何をこんなに騒いでるんですか?」
「ん…ああ、あいつらのテーブルの上にある、あの角を見てみろ」
ふむ、よく見ると彼らのテーブルの上には大きな角があることに気づいた。その角はねじくれて巨大で
その角を持った生物はどれほどの大きさがあるんだろう…と俺に想像を促す。

「で、その角がどうかしたんですか?珍しいもの?」
「ああ、珍しいといえば珍しいが、その角の持ち主はランページング・ラムという雄羊で
コンシュタット高地のそこそこ有名なノートリアスモンスターなんだ。
性格は凶暴で、ヘタに出会ったら命の危険もある。
そいつの角がここにあるってことは彼らはそれを倒したってことなのさ」

なるほど、聞いたことはないけど、凶暴なやつを倒したすごいパーティーってことか。
「ノートリアスモンスター?」
「ああ、それは…」
「ノートリアスモンスターっていうのは悪名高きモンスターって意味で、一体一体に個別の名前が付けられてる
モンスターのことなんだ。名前が付けられるだけあって、その地域にいるモンスターとはぜんぜん違う強さを
持ってることが多いです」

あら、彼が答えてくれる前にテーブルに座っていた女の子が答えてくれた。
「へぇーなるほど、ありがとう」
「ノートリアスモンスターなんてだれでも知ってると思ったけど」
「うーん、そのへんに関しては疎くてね」

この世界に半年いる俺だが、一般常識についてはまだ足りない部分が多い。ついでに色々聞いてみよう。
「ところでその角って高く売れたりするの?」
どうでも良い俗っぽい質問をする俺、まあ俺みたいな労働者はこういうのが一番気になるものである。

「うーん、この角自体には普通の雄羊の角の価値しかないけど、こういうの集めてる人なら高く買ってくれたり
するかもしれないって程度だね」
「へー、でも普通の価値しかないならなんでまた倒そうとしたんだ?あまり旨みがあるようには思えないけど」

命の危険を冒して強いモンスターを倒して、得るものが少ないなんて馬鹿らしいし…
「うーん、これは実は国から受けたミッションなんだ。コンシュタット高地で人に害をなしている
ランページング・ラムを倒してくれってね…報酬はこれを証拠に国からもらったから、この角は
ただの記念品くらいだね」

「なるほど、参考までに報酬はどれくらいもらったの?」
まあ俺みたいな労働者はこういうのが一番気になるものである(2度目)
「ふふふ、これくらいかな、ちなみに1,10,100ギル硬貨は入ってないよ」
そういうと女の子はカバンからじゃらじゃらと音を鳴らす小さな革袋を取り出した。

いくら入ってるかは分からないけど、じゃらじゃら音を鳴らせてる時点で少ないという考えは俺にはない。
それを見た他の冒険者はおぉー!と歓声を上げる者や。ほかにもすげー!とか、何故かよっしゃー!
という声まで聞こえる。まあ確かにすごいけど…よっしゃー?

「おいおい、ルティ……」
「ルティさん……」
ルティというのはその革袋を出した子の名前だろう。なぜか男の人とタルタルは呆れたような、笑ってるような
顔をしている。

「やれやれ……皆さん、今日は僕たちのおごりです!好きなだけ飲んだり食べたりしてください!」
パーティーの彼が大声でそう叫ぶと、客はどっと沸き立った。
「よっしゃ!ショウやるじゃねーか」

いつの間にか隣に来ていたおやっさんが、俺の背中をバンバン叩きながらいう。
「いてっ!えっ、何を?」
正直なにがなんだかわからない。

「この酒場のローカルルールみたいなもんなんだが、一仕事終えて大金稼いできたやつは
盛大におごらなくちゃいけないっていうちょっとした決まりがあるのさ」
まあここにしかないがな、とにやりとしながら付け加えるおやっさん。

「えーー、兄さん!そんなの聞いたことないよ!」
ルティという子は兄さんと呼ばれたさわやかな彼に詰め寄る。
「ここはそういうルールだってこと、ルティには言ってなかった……はは、ごめんごめん、まあ多く稼いだヤツ
がおごるってのはそう悪いことじゃあないよ、僕だって駆け出し冒険者だった頃はたくさん奢ってもらったしね」

「んー、なんか出させちゃったみたいでごめんなさい」
取りあえず謝罪を述べておく。そんな意図はなかったからね。
「いや、謝る必要なんか無いです。隠してるみたいにしてた僕達も悪いですしね。ここにいる人たち
分くらいは簡単に出せるくらいはもらったので気にしないでください」
「そうですか、ありがとう!頂きます」
「ええ」
なんて太っ腹な人なんだ。この喜びをジャンに伝えなければ!

「……おーい、ジャン!今日はこの人がおごってくれるってよ!だから俺の分エールもう一杯頼んでくれ!」
というわけでジャンの方に向かって吉報を伝える。
「え、ほんとに!?じゃあ僕もソーセージにもう一杯!ベークドポポトも欲しい!」

冒険者パーティーの3人はそろって目を丸くしながら見合わせている。俺の変わり身の早いこと早いこと。
冒険者というのは遠慮をしない生き物なのである。いや、鉱夫だっけ…?まあいいか

そしてその後好きなだけ飲んだり食ったりして、酔っ払った冒険者どもから
お前吟遊詩人なんだから歌ってくれよと言われて
「アニソン10連発でもいいの?」
「ショウって時々訳のわからないこと言うよね…」

ジャンがごちゃごちゃ言ってたけど無視してアニソンを10連続で歌ったりした、アカペラで。
なぜか、翔べ!ガンダムが盛り上がってた気がする。
昔のアニソンは勢いがあるね、うん。

ちなみに、吟遊詩人が主に使う楽器は、弦楽器、管楽器で俺が持ってるのはハープ、フルートだけである。
ギターでもあれば幅が広がっていいかもなぁ。
そうして時間が過ぎていき、騒がしい夜は続いていったのであった。

そして意識を戻す。
「で、あのあとどうやって帰ったんだっけ?」
「えーっとたしか…僕達飲み過ぎて寝ちゃってたよね」
「うん、それでおやっさんに起こされたんだ『お前ら起きろ、寝るなら家で寝ろ』ってね」

俺達は思い出すように確認していく。
「そのあと、なんとかここまでたどり着いたわけだね」
「みたいだな、あぁー思い出してきた。別れ際おやっさん最後に『明日は仕事休みにするか』って言ってた」
この状態でお仕事はきつい、うん。

「へえ、じゃあショウこれからどうするの?」
「そうだなぁまずは顔を洗って水を飲みたい、そのあとは飯を作る気力ないし……コウモリのねぐらでも行こう」
「オッケー、それじゃ行こうか」

ジャンはさあいこうというように俺を引っ張っぱる。
「…俺は金ださんぞ」
「えっ!?」
この極貧冒険者はもう…

「…えっ!?じゃない、まったく…まあ後でおごってくれたらいいよ」
「いやー、ショウはやさしいなぁ」
「ったく…とっとと行くぞ」
「おー!」
そうして俺達は家をあとにするのであった。

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