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第4話

俺達は共用の井戸に行って顔を洗い水を一杯飲んだあと、朝食を食べにコウモリのねぐらまで歩き出した。
「そういえばショウの家ってだいぶ散らかってたね。綺麗好きだと勝手に思ってたよ」
ジャンがそういえばみたいに言う、確かに俺のレンタルハウスは汚い。いろいろなものが散乱していて
鉱石とか原木や糸など、わけのわからない状況になっている。

「ちょっとクリスタル合成で故郷の品を作りたくてな、いろいろ必要な物を集めてつつ試行錯誤してたら
こうなってしまったというわけだ」
「へえ、ショウの故郷ってどこなの?」
「日本ってとこなんだけど、知らないよな…話を聞くにひんがしの国ってとこに似てるみたいだけど」
「うーん、聞いたことないね…」

まあ当たり前か…ちなみにひんがしの国はこの大陸から海を超え、遠く離れた東にあるらしい。
忍者とか侍とか聞いたことのある単語もその国から来てる。日本とは違うみたいだけどね。
「ところで故郷の品って何かできたの?」
「簡単なのしかできてないけど、今見せられるものと言ったらこれくらいしかないな」

そう言うと俺は腰に備え付けられた小物入れから、細長い容器を取り出す。
そしてそれを開け、中身を取り出す。
「これは?」

「これは箸、これを使ってものをつまんで食べる」
こっちにはフォークとナイフくらいしかなかったからな…
「へぇー、珍しいね、いつも使ってるの?」

「家で食べたり、弁当とか食べるとき使うくらいかな」
わざわざ店でマイ箸を出すようなことまではしない程度だな。

そして10分ほどだらだら話をしながら歩いて、俺達はおなじみコウモリのねぐらにたどり着いた。
コウモリのねぐらは基本的には宿屋で、朝食のサービスもやっていなかったのだが、やはり増える需要に
応えてか、酒と簡単な料理を出すようになった時と同じ時期に朝食を出すサービスを始めるようになった。

最近だと店員が一人増えたらしい。おばちゃん一人だと大変そうだったし、いいことだと個人的には思う。
店の中は昨日あれだけ騒いだにも関わらず、いつもと変わらない状態に戻っている。
朝早いだけあって客足もまばらで、おちついた静かな空間になっている。

「そうだ、ジャン天気もいいし買って外で食おうぜ」
「賛成!ショウにしてはいいこと言うね」
「俺にしてはってのは余計だ…んじゃあ決まりだな」

そう決めた俺達は早速アイアンパンにソーセージを2つずつ買って店をあとにした。
200ギルもあればお釣りが来る。
さっそく腰につけていたブロンズナイフを使い切れ込みを入れたあと、ソーセージを挟み込んで
簡易ホットドッグの出来上がりである。

「よし、これを持って商業区の噴水のある炎水の広場で食べるとするか、これだけじゃ寂しいし
あと途中でロデリュクスさんところでリンゴ買っていこう」
リンゴというのは、フォルガンディ地方特産の妖精のりんごである。
特徴として表面にぼんやりと発行する水玉模様がある。

大量に取れるため値段は安く、ポピュラーな果物である。味は甘味と酸味のバランスがちょうどよく
実も小粒ながら締まっていて美味しい。
フォルガンディは『北壁』と呼ばれる、切り立った山脈を超えた先にある地域で、永久凍土でできた土地。
りんごの栽培はどうしてるのやら…気になるところである。

それから俺達はロデリュクスさんのところでリンゴを2つ買うと、炎水の広場に向けて歩き出した。
炎水の広場とは、バストゥーク商業区にある名物で、憩いの場となっている。
俺達のいる場所からも歩いてすぐ着く場所にある。

しばらく歩くと俺達は炎水の広場についた。炎水の広場は噴水を中心にした円形の広場で、ちょっとした
スポーツができそうなほどには広い。
取り敢えず噴水の周りの縁に座り、一息つく。

「さーて食べるとしましょうかね」
「待ってましたー!ずっと持ちっぱなしだったからねー、早く食べよう」
いえーい食べ物~!とばかりにテンションの上がるジャン。

「マスタードあるけどいるか?」
「おー!準備いいじゃない」
ホットドッグといえばケチャップにマスタードだけど、マスタードだけは家にあったので取り敢えず小物入れに
突っ込んでおいた。瓶詰めのマスタードをスプーンで取って塗り塗り。

「まあな、さて食おうぜ」
がぶりとホットドッグにかぶりつく、アイアンパンは硬いパンなのでこういったものには向いてるか分からな
かったが、なかなかうまい。噛みごたえのあるパンに、ワイルドな味わいのソーセージにマスタードのぴりりと
した味わいがちょうどいい。

隣のジャンを見ると、何も言わず黙々と食べている。何も聞かないでもうまいというのはわかる。
お次はリンゴ、この世界の食べ物はすべて無農薬なんだなぁと考えるとすごいと思う。

服で拭ってから齧る。シャリシャリとした食感がいい。少し酸味が強いがホットドッグの後だと
ちょうどいい具合だ。

「さーて、ジャンよ食い終わったらどうするんだ?というか何時までこっちにいるんだ?」
「そうだなぁ……あと2,3日は居ると思うよ、前の冒険で手に入れたガラクタが売れるにはそれくらい
かかると思うし、その間はこっちに居ると思うよ」
「へえ、競売所に出すのか?」

「まあね、そっちのが早く売れるしね」
競売所というのは、様々な品物が集まる市場のようなものである。
売りたい側は手数料を払って、競売所に品物を預ける。その際この値段以下では売りませんよという最低価格
を明記する。その際によく取引される品目の場合は中央の競売所の取引相場のデータがあるので
それをふまえて設定することが多い。

買いたい側は、競売所に金を払い、競売所はそれを売った側に渡す。
こうしてみると競売というよりかは、国が売買を仲介するフリーマーケットみたいなもんだな。

「まあそれはおいといて、俺は食べ終わったし、鍛冶ギルドにに台車取りに行くけど、どうする?」
鉱石の引渡しに使った台車を取りに行くといくのは俺に定められた仕事なのである。
まあ今日は休みになっちゃったけどね。

「暇だし僕も付いて行っていいかな?大工房ってのも見てみたいし…」
「決まりだな、んじゃ行くとするか」

ということで早速俺たちはすぐ近くの大工房に足を運ぶことにしたのであった。
鍛冶ギルドは大工房という大きな建物の中にある。
この炎水の広場からも歩いてすぐの場所なのでこの用事を済ませるにはちょうどいい。

一応大工房という建物は政府の機能も抱えているんだけど、結構出入りは自由である。
部外者としてはもうちょっと気をつけたほうがいいんじゃないか?と思うのだけれど
なんと凄腕の門番がいるので問題ないらしい。

大工房は2層の構造になっていて、昇り降りするには2階の水車によってまかなわれているエネルギーで
動いているエレベーターを使わなくてはならない。コレが微妙に不便で階段を作って欲しいと常々言っている
んだけど……これは今言うことじゃないな。

「じゃあ僕はいろいろ見てくるから!」
ジャンはというと、大工房に入るなり早速このようなことをいって消えていった。小学生か!
俺は……台車を受け取るだけだな。
早速鍛冶ギルドに行くとするか。

鍛冶ギルドは大工房の1階の広場の先の奥まったところに存在する。
何度も来ているので場所は完璧に覚えている。鍛冶ギルドバストゥーク本部という札がついたドアをくぐり
俺は鍛冶ギルドに立ち入る。ギルドに入った瞬間ムッとした熱気が俺の体を包む。この熱の元はここに
ある巨大な炉である。ここの巨大な炉の煙突は外までつきだしている。

中では数人の職人がせわしなく働いている。……見るからにサボってる人もいるけど。
「すいませーん、台車受け取りに来ましたー」
「あぁ、おたくさんっすか、いつも世話になってるっすー、台車ならそこにあるっすよ」

台車はいつも置いてある隅っこに鎮座している。
「ああ、ありがとうございます」
「あ、ちょっと待ってほしいっす!」
いつもどおり台車を持って帰ろうとしたら、職人さんになぜか引き止められた。

「へ?」
「いや、大したことじゃないんすけどこの前、届いた品にいつもと違ってインゴットがあったんすけど
もしかしておたくさんっすか?」
「あ、はいそうですけど……何か問題でもありました?」
クレームかと思いビクビクする俺。

「いや問題なんてないっすよ、多少品質が悪くてもカッパーインゴットはいつでも需要があるっすからね」
ホッとする俺。でも粗悪ってことなのかと少し落ち込む俺。
「では何の用です?」
「鉱山から鉱石をうちに売って人達の中でインゴットに加工して持ってきた人は初めてだったんす。
だから珍しいなーとそれで少し興味を持っただけっす。もしかして独学っすか?」

「はい、特に人に教わったことはないですね」
いつもと違うものが入ってきたから気になったってところか。

クリスタル合成はイメージがだいじな作業であり、技術が介在する部分は少ない。
それゆえ俺は基本的な部分しか教わっていない。

材料を用意し完成品のイメージをクリスタルに移す。情報が飽和した社会で過ごしてきた俺は
様々なイメージを「知っている」。この前作った箸だってそうだ。ありふれてるけど知らない人に
イメージするのは難しい。
ただ、機械などの精密なものをつくるのは出来ないだろうけど。

「ふむふむ、そうっすか、クリスタル合成もいいっすけど、鍛冶の醍醐味はこの大きな炉で溶けたものを流し込み
鍛え上げ、作り上げることっす。……君も見てればイメージに多少役に立つかもしれないっす」
鍛冶については何も知らない俺にとってこれはありがたい。
あまり鍛冶の現場って見たことないしな……

「ではお言葉に甘えて!友人待たせてるのであまり見てられないのが残念ですけど」
ということで俺はじーっと作業を見守ることにした。
溶けてドロドロになっている鉱石を鋳型に注ぐ。研いで刃をつけ、そして柄を付ける。
それを大量に行なっている。どうやら作ってるのはナイフらしい。

「これは加工しやすい青銅で作ったナイフっす。あまり切れ味は良くないっすけどね」
他の職人さんも剣を作ったり、槍を作ったり、銃弾みたいなものも作っている。
その制作風景、完成品を見ることはクリスタル合成において大事なことだ。おっとお客さんみたいだ。

ちょうどいい頃合いだし、そろそろお暇しよう。そう思い俺は台車の取っ手を手に取る。
「忙しいところ失礼する。この前の軍の備品戦斧500本、石弓250本の納入の件だが……」
「そのことなら……ギルド長なんすけど、まだ出先から帰ってないみたいっすね」
「いないなら構わない、出直すことにするよ。ルシウスが来たとだけ伝えてくれ」
ルシウスと名乗る人物は目当ての人物がいなかったのか、すぐに帰ることにしたようだ。

「ふむ、君は……ツェールン鉱山で働いているのかね?」
と思ったが近くにいる俺に目をつけたらしい。
「ええ、しかしなぜそれを?」
「その台車、鉱山用に国が無償で貸し出しているものなのだ。それを持って行こうとしている君は鉱夫として
働いているのかと思ってね。ギルドの人間には見えないからな」
これおやっさんの私物だと思ってたよ……公共物だったのね。

「……理屈はわかりました、けど俺に何か?」
お偉いさんっぽいオーラが体を固くさせる。苦手でござる……
「そうだった、君は冒険者かい?」
「一応、身分的にはこの国の冒険者です」

冒険者らしいことはあまりしてないけど、冒険者ではあるので本当のことを言う。
「それなら話は早い……君にミッションを頼みたい」
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