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第5話

「ミッション……ですか?」
聞いたことのない単語に俺は首を傾げる。

「そうだ、君は初めてか?」
「はい」
「ミッションというのは国家から自国の冒険者に対して発令される正式な任務だ。無論断ることも
できる……上昇志向の強い冒険者が断ることは殆どないがね」

ちなみに俺は上昇志向は低い。というわけで即決せずとりあえず話を聞いてみよう。
「なるほど、とにかく受けるにも断るにも話を聞いてからでいいですか?」
「もちろんだとも、だがここで話すのもなんだ。私の執務室に行くとしよう」

「分かりました、えーっとルシウスさん……でしたっけ?」
職人さんとの会話の中に出てきた名前を思い出すようにしていう。
「そうだ、大統領の補佐官をしている。君の名前は?」

この国は共和制なので大統領がいるけど……名前何だったかなぁ
街頭インタビューで総理大臣の名前を答えられない女子高生みたいだ。

「ショウです、ミズイ ショウ 名前がショウで姓はミズイ」
「ふむ、珍しい名前をしているな……東の方の生まれか?……いや、これはミッションには関係ないことだ
さあ執務室はこっちだ。付いてきてくれ」

ルシウスさんのあとについて水車の力で動くエレベーターに乗り大工房の2回へ進んでいく。
そしてしばらく進むと、屋上の広いスペースにいくつか家のような建物が建っている場所につく。
俺はルシウスさんについてこの中の建物の一つに入っていく。
「ここが私の執務室だ。適当にかけてくれたまえ」
「はい」
手近にあった椅子に座る。やはり大統領補佐だけあっていい椅子だ、柔らかい。
「さて、早速だが本題に入りたい。近頃ツェールン鉱山のガルカ達が不満を持っているという話は聞いたことは
ないか?」
「えーっと……」
不満ねぇ……おやっさんは別に不満なんて口にしてないけど。

それは多分俺とおやっさんみたいに名目上は冒険者として自由に鉱石掘りやってる人たちではないな。
おそらく雇われの正式な職業としての鉱山労働者だろう。
俺とおやっさんが自営業だとすると彼らはサラリーマンってわけである。

俺たちと違ってるのは……鉱石が全然掘れなくても多少生活の保証があるって程度。
そのかわり取り分は俺達より低いみたいだけど。
鉱山で働いているのはガルカが多い。ヒュームとの割合でいうと7:3ほど

そのヒュームもつるはしを持って鉱石を掘るとか現場で開発をするいう仕事ではなく
監督官などの管理職や、事務職などの書類仕事になることが多いらしい。
ガルカという種族は力が強いしこういった形になるのはわからんでもないが
ヒュームとガルカの管理職の割合は露骨ではある。

「あぁ、そういえば、愚痴はたまに聞こえてきますねー」
世間話程度に述べる。
「あぁ、愚痴程度で済むなら問題はないのだ。しかし最近は労働意欲の低下、それに監察官への反抗的な態度
などが目立つようになってという報告があったのだ。これは鉱山の開発や発展に大きく影響することになる」
むむ、ちょっとこの言い方は……鉱山労働者を奴隷か何かだと思っているんだろうか。

「それで、俺に何を頼みたいんですか?」
俺はどちらかと言うと鉱山労働者側の人間なため、ちょっと棘のある言い方になってしまう。

「ここで強圧的に反抗を抑圧することも出来なくはない。だが、それでは後々に火種を残す結果になってしまう
し根本的な解決にはならないだろう。そこで君には調査をしてもらいたい。どのような不満を持っているのか
どうして欲しいのかなどといったことをだ」
俺の棘のある言い方を気にせずして、ルシウスさんは俺にミッションの内容を説明する。

「……内容はわかりましたが、何故俺なんでしょうか?監督官が直接聞くとかもできるような……」
思った事をそのまま言ってみる。だって俺である必要無さそうだし……

「そのようなやり方も考えたのだが、やはり現場の人間にはその考え方に近い人間がことにあたったほうが
いいと考えたのだ。……実際のところ我々が相手だと本音を出してくれないかもしれないというのが
本当のところだ。監督官というのは上司で懲罰を与える仕事もある。そんな相手には不満をぶつけにくいだろう
しな」

なるほどな、確かに監督官というのを鉱山その他の場所で見ることはあるが、あれは話のわかる上司というか
まるで囚人の労働を管理している看守みたいな感じだった。この国の労働の実態は俺には分からないが
あまり正しい姿には見えなかった。見ないふりをするよりこれを改善する助けになればいいかな。
モンスター倒すとかじゃないし。

「……そういうことならこのミッション受けさせてもらいます」
「そうか、ありがとう。報酬に関しては……ランク1の冒険者のミッションの相場とミッションの危険度
などを勘案すると、5,000ギルといったところだろうか?」

へえ、結構貰えるんだな。となるとあのノートリアスモンスターを倒した彼らはどれくらいもらえるんだろう。
「また聞くことになってしまいますけど、何故俺にこのミッションを?監督官については分かりましたけど
俺鉱山で働き出したの半年前ですし、新入りといってもいいレベルなんですけど」
実情だってどれほど知ってるものか怪しいレベル。雇われの人たちとはそもそも立場が違うし……

「ふむ、君の言いたいこともわかるが、正直君に頼むというのもたまたま大工房に居たからというのが大きい
私はこうして執務室の外に出るのは殆ど無いから、君にこうしてミッションを頼まなかった場合は
監督官を通じて、都合のいい冒険者に頼むところだったのだ」

俺はたまたま目をつけられただけということか、まあ俺の秘めた力を見ぬいたとかあるわけないしな。
「なるほど、分かりました。ではミッションを遂行するにあたってほしいものがあるんですけど」
「ほう?何が必要なのだ?」
「まず紙がほしいです。なるべく多めに。自分で用意するのはちょっぴり高くつくので」

この世界の紙は靭皮紙と呼ばれる樹木の皮の繊維から出来た紙で普通の紙と大きな違いはない。
さすがに日本のものほど品質は良くなく、安くもないが俺みたいな一般庶民でも買えない程でもない。
まあこれくらいなら必要経費で出してもらえたらなー程度である。

「なるほど、それは経費で落とすとしよう。すぐに渡す。他に何かあるか?」
そうだなぁ……もうだいたい必要なことは聞いたし、調査は俺の裁量でやる感じだし特にないけど
ああ、そうだ

「ええと、実は俺ここヴァナディールの文字を読むことは出来るんですが、書くのはまだうまくできないので
紙に書いたものを口述で報告する形で行おうと思うんですけど」
この世界の言語はアルファベットのようなものを用いていて日本語とは少し違っている。

何故読めはするのかというと……正直俺にもわからない。人が話しているのはどう聞いても日本語に聞こえる
のだけど、文字にしてみるとまったく違うものなのだ。その文字も単語の意味が頭の中にすっと
意味が入り込んでくる。

ただ、こっちの世界の固有名詞、バストゥークとかツェールン鉱山だとかはそうならない。
魔法とかある世界だし俺はあまり気にしてないけどね。
文字を書くのは別で読めるけどまだうまく書けないというのが現状のところだ。少しは書けるんだけど
報告には使えないなぁ

「ああ、構わない、冒険者が読み書きできない場合があるというのも想定済みだ。……だが読めるのに書けない
とは変な話だな」
「うーん、俺が学んだ文字はここヴァナ・ディールの共通語じゃなくてえーっと、一部の民族の間で使わ
れていた文字でして、共通語はまだ未熟なんす」

「そういうことだったのか、君のような者がいるとはバストゥークも開けた場所になってきたものだ。……
決して馬鹿にしてるわけではないぞ」
「それは分かってますよ。えーっと期限はどんなもんですか?」

「期限か……そうだな、10日以内に頼めるか?これくらいあれば君の仕事の妨げにもならないかと思う」
10日か、妥当なところだな。
「了解しました!では報告をお待ちください」

「おっと少し待ってくれたまえ」
ルシウスさんは机の辺をゴソゴソして何かを集め取り出す
「紙だ、持っていくがいい」
そうして紙の束を受け取った俺はそそくさと立ち去るのであった。

「ありがとうございます!ではこれにて失礼します」
ふぅ、終わったか……お偉いさんというのは結構緊張するなあ
それにしてもジャンのやつ待たせてしまったかな。とりあえず入り口に急いでみよう。

しかし、時間がわからないというのも不便だなぁ、この世界にも時計や懐中時計といったものはあるけれど
俺にはまだ手が出せないし、時計がほしいな。時間に縛られない生活というのも悪くはないけど、やっぱり
不便だよなぁ……

とそんなことを考えているうちに入口近くまでたどり着いた。
ジャンは・・・・・・と、お、いたいた。特徴的な赤毛と長身のおかげでジャンを探すのに苦労はしない。
ジャンはどこか見覚えのある3人組と話しをしているようだ。

「すまん、ジャン待たせた」
俺は話をしている最中のジャンに話しかける。
「あっ、ショウ遅かったじゃないか」

「すまんなやっかいもんにつかまっちまった・・・・・・それでそちらの方は?」
やっかいなもんといってもいいか微妙だがまあいいだろ。
「ショウってば昨日あれほどお世話になったじゃないか」

「・・・・・・むむ?」
3人組を改めて見直す。ヒュームのさわやかブラウンヘアーの男性、ボーイッシュな女の子、タルタル・・・・・・
の性別は見分けがつかんな。フードかぶってるし
見覚えがあるような無いような……

「あれだけ飲んだり食べたりして忘れるなんて……いや、あれだけ飲んだりしたから忘れたのかな」
3人組の一人がつぶやく。いやいや、いつもはあんなに飲み食いしないんだけどなあ
あんなに飲むのはおごってもらうときだけなのにと厚かましいことを考える。

だってここじゃそうしないと貧乏くじ引くんだモン!
「……ん、まてよ……?おごってもらったっていうと……ああ!あの冒険者パーティーか」
「やっと思い出した……」
ジャンがため息をつく。まあ最初以降話してなかったし仕方ない、うん。

「とりあえずまたお礼を言っておこう、ごちそうさま。……でなんでまたその人達と?ジャン知り合いだったの
?」
飲み食いしすぎたから金返せ!とかいわんだろうな。
「いや、さっき知り合ったばかりさ、まあそのへんもおいおい説明するよ」
こうして俺達は自己紹介をする流れとなったのである。
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